営業組織づくり
営業の属人化を解消するには?エース依存から抜け出す4つのステップ

「エースが抜けたら売上が止まる」「新人がなかなか育たない」。営業の属人化は、多くのBtoB企業が抱える悩みです。この記事では、属人化が解消しない原因を整理したうえで、マニュアルづくりや研修だけで終わらせないための4つのステップを解説します。
営業の属人化とは
営業の属人化とは、売れるやり方が特定の人の頭の中にしかなく、組織として再現できない状態のことです。売上の大半を数人のエースが支えていて、その人が異動や退職をすると数字が大きく落ちる。これが典型的な姿です。
属人化そのものが悪いわけではありません。立ち上げ期の事業では、社長やエースが先頭に立って売ることは自然です。問題は、事業が次の段階に進んでも、そのやり方が組織に移っていないことにあります。
属人化が進んでいるサイン
次のうち、当てはまるものがいくつあるかを確認してみてください。
- 売上がトップ営業の数人に偏っている
- 新人が独り立ちするまでに1年以上かかる
- 月初の見込みが、月末に大きく外れる
- 失注理由が「価格」と「時期」ばかりになっている
- 上司が「見て覚えろ」以外の教え方を持っていない
当てはまるものが多いほど、原因は個人の能力ではなく、組織の仕組みにある可能性が高いと考えます。
属人化が解消しない3つの原因
属人化の相談を受けると、「エースのノウハウをマニュアルにしたい」「研修で底上げしたい」という声をよく聞きます。どちらも必要な打ち手ですが、それだけでは解消しないことがほとんどです。足りないのは、次の3つだと考えています。
原因1:測る物差しがない
商談がうまくいっているかどうかを、感覚で判断している状態です。顧客の話をうのみにして「たぶん決まる」案件を見込みに入れ、誰も事実で確かめていない。物差しがないので、エースが何をしていて、ほかのメンバーが何をしていないのかも分かりません。
原因2:育て方の型がない
勝ちパターンが言葉になっていないため、新人は真似ができず、育成は上司の経験談になります。マニュアルをつくっても、「なぜその順番で聞くのか」「どこで何を確かめるのか」まで落ちていないと、現場では使われません。
原因3:育てる人がいない
上司もプレイヤーとして数字を追っていて、育成に時間を割けない状態です。国内の調査でも、営業育成が進まない理由の1位は「上司の育成スキル不足」(27.9%)という結果が出ています。
出典:UMU「営業育成に関する調査」2023年(大企業の営業課長104名)
属人化を解消する4つのステップ
3つの原因に対応する形で、次の4つのステップで進めます。ポイントは、いきなりマニュアルや研修から入らず、まず事実を測ることです。
ステップ1:商談の事実を、同じ物差しで測る
最初に、エースとほかのメンバーの商談を同じ基準で採点します。材料は、すでにある商談録画やCRMの記録で十分です。新しいツールを入れる必要はありません。
見る観点は、たとえば次のようなものです。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| ヒアリング | 予算・決裁者・必要性・導入時期などを、漏れなく質問で引き出せているか |
| 課題の整理 | 顧客の課題と、放置した場合の影響を整理して、顧客と言葉で確認しているか |
| 提案の設計 | 顧客の比較検討の基準や、社内の承認の流れを踏まえて提案しているか |
| 次の約束 | 商談の最後に、日付の入った次のアクションを合意できているか |
このとき、個人の力と、それを支える組織の仕組みを分けて採点することが大切です。エースの点数が高く、組織の仕組み(ヒアリング項目の統一、提案書の型、レビューの場など)の点数が低ければ、それが属人化の正体です。
診断のポイント
個人のスコアと組織のスコアを掛け合わせると、打ち手の方向が決まります。
- エース依存型(個人は高い・組織は低い):エースのやり方を型にして組織に残す
- 個人未活用型(個人は低い・組織は高い):型はあるので、使われるように育成する
- 型欠陥型(どちらも低い):まず型をつくるところから始める
ステップ2:エースのやり方を言葉にする
採点で見えた差をもとに、エースが「何を・どの順番で・なぜ」聞いているのかを言葉にします。つくるものは、ヒアリングシート、よくある反論への切り返し集、提案書のひな形など、明日の商談でそのまま使えるものに絞ります。
エース本人に「コツを書いてください」と頼んでも、なかなか言葉になりません。実際の商談録画を見ながら、「この質問はなぜここで入れたのか」を一緒にひもといていくのが近道です。
ステップ3:売上目標から、必要な行動を逆算する
型ができたら、それを使って「どれだけ動けば目標に届くか」を数字で示します。たとえば半期の売上目標が5,000万円の場合、次のように逆算できます。
| 段階 | 計算 | 必要な数 |
|---|---|---|
| 受注 | 5,000万円 ÷ 平均単価100万円 | 50件 |
| 提案 | 50件 ÷ 受注率30% | 約167件 |
| 商談 | 167件 ÷ 提案化率50% | 約334件 |
| 営業の人数 | 334件 ÷ 1人あたり半期60商談 | 約6人 |
※ 数字は説明用の例です。実際は自社の実績値で計算します。
この4つの割り算の数字(単価・受注率・提案化率・1人あたり商談数)を動かすのは、どれも人の力です。逆算すると、どの段階の力を伸ばせば目標に近づくのかがはっきりします。
ステップ4:上司が回せる形で引き継ぐ
最後に、型を使った育成を上司が自分で回せるようにします。おすすめは、次の3段階で引き継ぐやり方です。
- やって見せる:外部の支援者が商談録画の採点と1on1を行い、上司は同席する
- 一緒にやる:上司と一緒に採点し、1on1に支援者が同席する
- 任せて確認する:上司が採点と1on1を行い、支援者は確認だけをする
ここまで進めば、外部の支援がなくても、組織の中で人が育つ仕組みが回り始めます。
よくある失敗
マニュアルをつくって終わる
エースのやり方を文書にしても、現場で使われなければ意味がありません。使われているかどうかを、商談の録画やCRMの記録で確かめ続けるところまでが、属人化の解消です。
研修だけで解決しようとする
研修で知識はそろいますが、翌週の商談で使えているかは分かりません。研修の前後で同じ物差しで商談を採点し、変化を確かめることをおすすめします。
ツールを入れれば解決すると考える
SFAや通話解析ツールで見えるようになるのは、主に活動量です。「何を聞けていないのか」「次に何を変えればよいのか」まで決めるには、基準を持った人の判断が必要です。
まとめ
営業の属人化は、個人の問題ではなく、測る物差し・育て方の型・育てる人という組織の仕組みの問題です。解消するには、次の4つのステップで進めます。
- 商談の事実を、同じ物差しで測る
- エースのやり方を言葉にする
- 売上目標から、必要な行動を逆算する
- 上司が回せる形で引き継ぐ
まずは、エースとほかのメンバーの商談を1件ずつ見比べてみてください。そこにある差が、最初に型にすべきポイントです。


